山伏

クラブやサークルに勧誘される。

サッカー部、陸上部、バスケット部、

スキーサークル、テニスサークルなどなど…

どれも華やかで楽しそうだ。

一年生が先輩たちに声をかけられている。

自分も声をかけられてもいいように心がけていた。

先ず声をかけられたのが、ラグビー部…

なるほど…そりゃそうだよな、体格的にな。

にこやかに御断りした。

先を進むと相撲部が四股を踏んでいた。(やばい)

とっさにコースを変えてクリアーした。そして柔道部もすかさずクリアー。

今更ながらスポ根な学生生活は望んでいない。ましてや相撲・柔道なんて先ずありえない。

 

次に、「やっと会えたね〜!さがしたよ!」と後ろから声をかけられて振り向くとそこには、わかりやすい格好をした応援団の方々が自分の肩に手をかけて

ニコニコして立っていた。目は笑っていなかった。(さらにヤバい!)

とっさに危険を察知して逃げた。追ってはこなかった。

 

やれやれと学食に入って一息つくことにした。

1人席に座って一服しようとタバコに火をつけた時、目の前の席に

バサ!っと音を立てて何かが座った。

嫌なにおいがした。(すげーやばい!)

ゆっくり顔を上げるとそこには

全身白装束でホラ貝を首から下げた山伏が座っていた。

「ウワッ!」

不覚にも余りのすごさに固まってしまった。

(な、なんじゃこりゃ!)

自分は頭を動かさず、横目で辺りを見回してみると、皆んながなんとなく周りから遠ざかっていくようにしている。まずいよ~

 

「山伏研究会です」

 

めっちゃ低音のガラガラ声で言われた。

 

(見たまんまやないかい!)

と心の中で思いっきりツッコミを入れた!

しかし、自分の口から出た言葉は

「〇▲◇☆※です」

と自分でも何を言っているかわからない言葉を発していた。

その後、その山伏からとくとくと話しをされてたが、

一切覚えていないし、何も聞こえていない。

それより、この場をどうやって回避するかをフル回転で考えていた。

そして出た言葉が、

「実家が日蓮宗の寺なので!すみません!」

と、突っ込みどころ満載な意味不明な言葉を発してその場をダッシュで立ち去った。

(ウヒャー!!)

(今日はもう帰ろう!)とバス停の方向に走って行き、

停留所に停まっていたバスに飛び乗った。

遠くで「ぷぉーぷぉー」とほら貝の吹く音が聞こえた。